「若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間」その3

前々回では、人の体には“ガタ“はこないこと
前回では、老化のさまざまについて紹介しました。

この本の順番では、現代の進化論の俯瞰、老化の理論
と理論の老化が続いていますが、
このブログでは順番を変えて、本書のハイライト部分
とも思われる二つの老化の仕組みのうちの一つ
“複製老化“について紹介いたします。

原生生物の老化ー遺伝子共有を拒否するものは死刑

5億8千年以上前から生きている原生動物のゾウリムシは
単純な細胞分裂(クローン化)によって生殖を行います。
ゾウリムシは、「食べる→クローン化→食べる→クローン化」
を繰り返し、最終的にはその子孫がコロニーを乗っ取って
単一文化にしてしまいます。

そこで、自然選択は、これに対し障壁を築きました。
ゾウリムシが生殖を行うたびに、テロメアと呼ばれる
染色体の尻尾から、わずかなDNAが失われるようにしました。
細胞分裂するたびにテロメアは短くなっていき、最終的には
染色体が不安定になって機能しなくなり、細胞は衰えて
死に至ります。

この疾患を癒すには、テロメラーゼという酵素が必要です。
このテロメラーゼは、テロメアの短縮を修復する役割を
になっていますが、クローン化の際にはテロメラーゼが
役割を発揮することはありません。役割を発揮するのは
ゾウリムシが“接合“を行う時だけです。(ゾウリムシは接合
によって遺伝子交換を行なっています。ゾウリムシの生殖は
細胞分裂=クローン化ですので、生殖と遺伝子交換は分離
して行われます)

この単細胞原生生物の細胞の複製のたびにテロメアが少しずつ
失われていくことを「複製老化」と言い、私達人間の細胞
の老化と実質的には全く同じです。

この複製老化を人に即して、もう少し詳しくみてみましょう。

複製老化が人の老化にどう寄与するのか

ゾウリムシは、正常な細胞分裂の時にはテロメラーゼを使え
ません。テロメラーゼが発現するのは、比較的まれである接合
の時だけです。

人間の場合、テロメラーゼは生涯を通じてほとんど使うことが
できず、受精卵の中でのみ発現します。精子と卵子が結合し
受精卵が形成されると、まずはDNAが再プログラムされて新た
なスタートを切り、そのプロセスの一部がたくさんのテロメラ
ーゼを展開させ、長いテロメアを持った受精卵が生命活動をは
じめます。人間の受精卵が成長を始めるとき、2万ユニットの
テロメアを持っています。しかし、幹細胞は子宮の中で急速に
分裂するため、赤ん坊が生まれる時には、1万ユニットのテロ
メアしか残っていません。この1万ユニットは人間が死ぬまで
生き続けますが、細胞が成長や修復のために分裂するたびに生
涯を通じて短くなり続けます。

加齢によってテロメアが短くなった幹細胞の蓄積の影響

1 細胞の再生を止めます。常に塩酸にさらされている胃の内壁
 は、絶え間なく細胞が入れ替わっています。血液細胞と皮膚
 細胞は数日ごとに新しくなっています。しかし、テロメアの
 老化で幹細胞の能力が落ちると入れ替えが遅くなります。
2 テロメアの短くなった細胞は、染色体がほぐれがちになり、
 ダメージを負いやすくなります。これによって、活動的な幹
 細胞は癌状態へと導かれてしまいます。
3 老化した細胞がシグナルを発し、身体中に炎症を起こさせます。
 炎症は加齢が原因による体の自己破壊の最も一般的な例で、
 老化した細胞は火に油を注ぐことになります。

テロメアと癌

テロメアの短縮を回復する酵素のテロメラーゼの発現が受精卵の
成長の時に限定されているのは、体を癌から守るためではないか
とする理論がありました。

しかし、動物実験で癌に対しては、テロメア短縮よりも免疫の方
がより良い防護を提供することがわかりました。

若い時は、免疫システムが癌の発症をおさえます。しかし歳をと
るとテロメアが短縮して免疫システムが衰えます。新しい白血球
を作る幹細胞がテロメアの短縮によって機能が低下してしまうか
らです。

さらにテロメアが短くなった染色体は不安定になり、癌化する
傾向があります。しかもテロメアが短くなりすぎた染色体が死ん
でしまう上に、細胞がパニックモードになり、身体中に警報を送
り、炎症を引き起こします。私たちが歳を取るにつれて癌のリス
クが上昇する最大の原因は炎症です。

細胞老化は5億年前から進化を始め、遺伝子共有を強制することで
利己的な個体が遺伝子プールを独占するのを防いできました。
細胞老化は全身老化を引き起こし、全身老化は最も成功している
個体ー高齢まで生き抜いてきたものたちーを全滅させます。
その結果、彼らは遺伝子プールを独占できず、集団に世代交代が
起こり、若い個体が広々とした生態的地位(生物の生存に必要な
要素を提供する生息場所)で成長・繁栄するチャンスが生まれま
す。これが生命の循環です。個体は生まれ、死んでいく。しかし
コミュニテイは続きます。
IMG_0068.jpeg

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント